life is like a bike

「昨年出しました自著『人口18万人の街が、なぜ美食世界一になったのか』で、
サンセバスチャンについて書きました。サンセバスチャンは、つい二十年前まで、
ほとんどなにもない小さな街でしたが、おっしゃるように、「昔の仲間」と「新しい話」
をはじめ、自分たち流のあたらしい料理をつくりはじめました。しかも彼らは、「伝統」
も大切にし、それを守りつつも刷新したのです。結果、地元に定住する人は少ないけど、
「訪れる人」がわんさかいる街になりました。いまをもっても、交通の便は最悪なのに。
実に不思議な場所だと思います。」

┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃【Future Report】より

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photo:コンチャ湾をバックに

先日大阪のトークライブでお会いした高城剛さんに、このところ大きく影響を受けていて
サンセバスチャンに行きたいと思ったのも高城さんの著書を読んだからだった。

インターネットの普及によって、ついその場にいながらにして物ごとがわかった気に
なってしまうが、本当に大切なことは現地に足を運び、自分の目で見て感じることだと、
世界中を回って仕事をされている高城さんご本人の口から聞いた。
そして、私はサンセバスチャンまでやってきた。

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ミュンヘンからやってきたヒロチェ、ハンガリーからやってきたシズさん、
そして日本から来た私ZUZIEの3人は、短い休暇を利用してサンセバスチャンまで
とうとうやってきた。

ランチで既に2軒程回って、モンテウルグルにのぼって腹ごなしをした後
再び旧市街地のバルの聖地に戻ってきた。いよいよ夜の部スタートだ。

この地を旅されたことのあるPedalさんに教えてもらったところによると
混み合っているバルに飛び込むのが吉ということだ。
キョロキョロしながら店先を物色すると上の写真のように、人気店は入り口から
カウンターまで人で溢れかえっていて(これはそこまで多くないか)、
通りすがりの異国の旅人としては入店をためらわれるところだが、
エイヤッ!と勢いで飛び込むのだった。

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人をかき分け、オーダーがはけていくカウンターにじわじわと近寄りつつ
ずらりと並んだピンチョスを見渡して目星をつける。

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カウンターは色とりどりで、各店ごとに工夫が凝らしてあって、
見ているだけでも本当に楽しい。

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カウンターに接岸したら、忙しそうにサーブする店員さんたちのタイミングを見計らって
目を合わせ、オーダーする。スペイン語で数と「これ」と「お願いします」を覚えておけば
あとは指差しで意思は通じる。スペイン語はイタリア語とかなり近い。

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このあたりの名物、鰻の稚魚をてんこ盛りしたピンチョスもあった。

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店内はこんな感じなので、壁際のカウンターや小さなテーブルの空きをみつけては
場所を確保する。見ての通り、老若男女、小さな子どもからバスクベレーを被った
お年寄りまで、そして多種多様な人種が入り乱れて、なんとも言えない楽しい雰囲気を
作り出している。さすがにこの時期でこの場所ではアジア人は我々以外見当たらなかった。

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最近テレビで目にしたが、こちらには生ハムをカットする全国大会のようなものがあるらしい。
このお兄さんも見事なナイフさばきでカットしてくれた。
カットされたハムも、ハムの断面も美しいこと。

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どんぐりしか食べないという豚ちゃんの生ハムは、色も味も絶品だった。

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こちらではワインが安くてうまい(一杯1.5 〜2€くらい)のだが、
他にもうまい酒がある。その一つがシードラ。りんごのお酒。
写真のように高いところから注いで、泡立たせる。
この泡が消えないうちに飲み干すのが現地流だそうだ。

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これがまたピンチョスとあうんですわ。

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もうひとつ現地の酒といえばチャコリ。微発泡性の白ワインでこれがまたうまい。
シードラと同じく泡立てて注いでくれる。

どこかの店先では若い女の子たちがチャコリの歌を歌っていた。
あさひ美容外科のCMソングをもう少しテンポ早めたような感じ。
♫チャーコリー、チャコリー、チャーコリー、チャコーリー♫

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私が気に入ったのは最後(7軒目!)に立ち寄ったBar Zeruko.
斬新なピンチョスが多く、味も雰囲気も最高だった。

そこでふと話しかけてきたのがボストンからきたという、
チャーチルに似たアメリカのおっさん。ものっそいアメリカ訛りだった。

よお楽しんでるかい?
もちっすよ!
自分らどっからきたんや。
えーとミュンヘンとハンガリーと日本ですわ。おっちゃんは?
わいはボストンや。
おー!レッドソックス優勝おめでとう!イェーイ!(ハイタッチ)
ヨーロッパの連中はレッドソックスいうても、はぁ?いわれるんや。
こっちきておめでとう言われたん初めてや!日本人選手はよおがんばってくれた!
あ、タジマとウエハラっすね。
そやウエ、えーとウエハラ言うやつや。ようやってくれたわ。ガハハ!

みたいな感じ。

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次に話しかけてきたのは、地元のおばちゃんとロンドンからきたお兄ちゃんやった。
私もこのバルくるの#回目なんだけど、そのデザート食べたことないのよね。
なんて名前?とか言っているうちに話が弾んだ。

サンセバスチャンはここ数年で急激に観光客の数が増えているらしい。
地元の大学では料理学部が設立されて、専門的な知識と技術を学んで
ホテルや著名レストランに就職していくのだとか。
食で世界中から観光客を集めているだけあって、地元の本気度が伺える
お話をいくつか伺った。

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うまくて安い酒を飲みながら、うまいピンチョスをつまんでハシゴする。
これがサンセバスチャンのバルホッピング。

店によってトラディショナルなバルもあれば、漁師のオヤジたちが
やってるような威勢のいい海鮮系のバルもある。
うさぎの肉や、羊の脳みそといった斬新なタパスを出す前衛的なバルもある。

1人で1軒につき酒2杯とピンチョス2つ3つ頼んでも10€いくかどうか
といったところ。これならハシゴをしようかという気になる。

素晴らしいと思ったのは、ビルバオと同じく街がクリーンで
怪しい客引きがおらず、ぼったくられそうな店がなく、誰もが安全に
美味しいものを、手頃な値段で、コンパクトなエリアで楽しむことができるということ。

uechicchiさんの角打ちブログをふと思い出したのだけれど、
日本にもお酒と小料理を安くで楽しむ文化があるんだけどなぁ。
常連の溜まり場で、いちげんさんには入りにくい閉鎖的なところはある。
でも、食に関しては高いポテンシャルがあるのに、どうしてサンセバスチャンのように
世界中から観光客を呼び込めないのだろう。いや、きっとできるはずだ。

7軒もバルを巡って、かなり歩いた体にチャコリが染みわたって
結構降っていた雨のことなんか、ほとんど気にならずにご機嫌でホテルへと戻った。

そして短い私達の旅も終わりに近づこうとしていた。
素敵だと聞いたフランス国境近くの街にも行きたかったけれど
美紀ちゃんのいるマヨルカ島にも足を伸ばしたかったけれど
それはまた今度ね。きっとまた来るよ。

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コメント

    • uechicchi
    • 2013年 11月 11日

    素晴らしい街ですね、とても楽しそうなのが羨ましい。
    千ベロで飲めるなんて、日本の立ち飲みと似ているなと思っていたら
    自分の名前が出てきてビックリ(笑

    • いやあ、まじでよかったですよ。
      Uechicciさんの行きつけの立ち飲み屋が、狭いエリアに100軒くらい密集していて
      英語やスペイン語やフランス語が飛び交っていて、大勢で賑わっている感じです。
      そして、朝はコーヒー、昼はブルスケッタ、夜はピンチョスを出すのでいつでも
      入れるんですよ。若者はカウンターか立ち飲み、年配の方はテーブル席という感じでした。
      何より、お酒も料理もハイレベルで安いのが最高!

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