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TOYOTA?Panasonic?
あなたもメーカーになれる、と聞いたら眉に唾を付けるだろうか。
作りたいものは何でも作れるとなれば、あなたは何を作る?
ほんの数十年前、コンピューターや印刷機は巨大且つ高額で、個人が所有するものではなかった。
今はほとんどの人が当時より何倍も高性能なコンピューターを一人一台以上も所有しており、
家庭にプリンターがあることは珍しいことではなくなった。
一方物質的なモノ(製品)を作ることは、高額な生産設備と生産体制が必要なため
資本を持つ企業にしかできないことだった。
ところが、近年、自宅でモノを作り、販売するDIY愛好家が台頭しているという。
彼らは「メイカーズ(作り手)」と呼ばれている。キーとなるツールは3Dプリンターだ。
3Dプリンタはスクリーン上の幾何学図形を取り込み、みなさんが手にとって実際に使える
オブジェクトに変換する。3Dプリンタには、溶融プラスチックを積み上げてオブジェクトを
作る方式もあれば、液体または粉末の樹脂にレーザーを照射して固めて立体を成形し、
原料容器の中からオブジェクトを浮かび上がらせる方式もある。また、ガラス、鉄、
ブロンズ、金、チタン、ケーキ飾りの糖衣など、さまざまな素材を使えるものもある。
このツールの価格がどんどん下がって一般の人でも手に届きそうなところまできている。
3Dの設計ソフト(フリーのものもある)で作った図面や、3次元スキャナで取り込んだデータを
3Dプリンターに読みこめば、製品のプロトタイプがあっという間にできてしまう。
モノによってはそのまま製品になってしまうのだ。
例えばinvisalignという歯科矯正システムでは、患者の歯並びをスキャンして
3Dプリンターでマウスピースを作成するという。
著者は「メイカーズ」の台頭の潮流を「本当の革命はこれからだ」というような表現をした。
それは3Dプリンターが凄い!ということだけを言っているのではない。
製品もしくはプロトタイプを作るまでは、旧世代の多くの作り手が挑戦してきたことだ。
現代では、そこから世界中の製造業請負サービスを手軽に利用できる。
ウェブを使って資金調達をし、グローバルに販売することができる。
つまりアイデアさえあれば、誰でも本格的に製造業を始められるようになったのだ。
それは、ウェブのお陰で個人が起業することが可能になったように、
物質的なモノ作りの世界での、起業に対する参入障壁が急速に下がっていることを意味する。
私達が流行りのソーシャルメディアなんかに気を取られているあいだに、
メイカーズはより速く、より安く、より良いものを作り出している。
自転車に乗る人は想像できるかもしれない。フレームを作るのは難しいかもしれないが、
speedplayのユーザーが使う、歩けるクリートカバー:Keep On Kovers
garminのユーザーが使うハンドルマウント:bar fly
こういった製品であれば、もはやアイデアと僅かな資金があれば誰にだって作れてしまう。
ひょっとしたらこれらもメイカーズが作ったものかもしれない。
本書の著者はWIRED誌の前編集長であり、デジタルが世の中を如何に変えていくかを伝えた
『ロングテール』『FREE』という衝撃作を世に送り出したクリス・アンダーソンだ。
彼はWIREDの編集長を勤める傍ら、droneという無人航空機のラジコンを作る会社を立ち上げた。
そしてその会社の業務が多忙になってきたので、ついにはWIREDの編集長の座を辞して
メイカーとしての業務に専念することになったという。本書「メイカーズ」が伝えることを
地で行く人なのだから、説得力がある。
彼は来るべきメイカーズムーブメントの時代をこう表現している。
ゼネラルモーターズやゼネラル・エレクトリックが消えてなくなるわけではない。
ウェブが普及してもAT&TやBTがなくならなかったのと同じ事だ。
「ロングテール」が示すように、大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作に
よる独占が終わる時代なのだ。もの作りにも同じことが言える。ただ、「より多く」
なるというだけなのだ。より多くの人が、より多くの場所で、より多くのニッチに注目し、
より多くのイノベーションを起こす。そんな新製品ー目の超えた消費者のために数千個単位で
作られるニッチな商品ーは、集合として工業経済を根本から変える
ようこそ、モノのロングテールへ。
追記:3Dプリンターなどの工作機械が一般家庭にまで普及するにはまだ時間がかかるかもしれないが、
日本でも既に工作機械を共有し、個人のモノ作りを支援しようという活動が始まっている。
link:FabLab Japan
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