life is like a bike

近年父の日のプレゼントとして、モノではなく野球のチケットなどの「体験」が、義父と私と義弟に贈られるようになった。今年は映画チケットということで、義父の好きな歴史モノの『居眠り磐音』を観に行く算段だったが、タイミングの都合で終わってしまい、観覧当日になんの前情報もないままに連れられて行ったのが『新聞記者』だった。

観始めてぐいぐい引き込まれていったのが、現在の政治やメディアとの関連性で、森友・加計学園問題やセクハラ問題を想起せずにはいられない展開に「これはノンフィクションか?」という錯覚を覚えてしまった。

映像面においてもカラーグレーディングによる表現が秀逸で、内閣情報調査室(=内調)は無彩色に近い色調で映し出され、組織のため国のために個人を犠牲にして奉公する役人たちが冷酷で感情を失ったかのように映し出される。一方で新聞記者たちの職場は色を失わずに、カメラワークも敢えて手持ちで人間臭さを出し、見事な対比効果をつくっていた。

何より主演の俳優陣の演技が素晴らしく、官と個のあいだで揺れ動く松坂桃李さん、自分の過去と向き合い、真実をひたむきに追い求めるシム・ウンギョンさん、そして冷酷に指示を出し続ける田中哲司さんの姿に引き込まれた。

このような映画を作った監督には敬意を評したい。先進国の中で報道の自由度が著しく低い日本において、よくこのような映画を作ったものだと、映画を観た直後に最初につぶやいた。日本のメディア関係者には、この映画を観て奮い立ってほしい。

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