life is like a bike

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ガリビエからスタート地点のブールドワザンまで
約45km(!)の下り。
序盤はご覧のような、恐ろしく曲がりくねった道のり。

私はstowaway jacketよりやや厚手のrain jacketを持ってきた。
失敗だったのは、アームウォーマーを最終判断で置いてきて
しまったこと。7月といえど、この標高と気候では体感温度は
1桁台となる。あまりの寒さに歯をカタカタ言わせながら
ロングダウンヒルへと出発した。

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2番手の白いジャケットを着ているのが私。
ガリビエの南側のルートは、雪解け水が砂利を路面に
運んでしまって、スピードを乗せるには危険な状況だった。

ご覧のように、ガードレールもなく、ひとつ間違えれば
致命的な状況が訪れる。さらに、冬場雪に覆われる路面は
過酷な気象条件にさらされるため、荒れていることが多い。

ここまできて、最悪の事態にはなりたくないので
セーフティを優先したダウンヒルを心がける。

 

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しばらく下ったところで、車が止まり人だかりが
できていたのでスローダウンすると、参加者らしき人(女性か?)が
落車しているらしく、ぐったりと地面に横たわっていた。

事故発生からしばらくたっているようだったので
救急の要請など、必要な措置はされていると判断して
その場を後にする。

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ガリビエを下り終わっても、延々と緩斜面が続く。
ポツポツ降ってきたな、と思ったら、あっという間に
前が見えないほどの土砂降りになった。

下界におりて交通量も増えてきたこともあって
これ以上の走行は危険だと判断して
切り立った岩壁に掘られたバス停の凹みに避難する。

我々以外にもう一人、避難者がいたので
話しかけるとイギリスからやってきた方だった。
ロンドンから車を飛ばして参加しているという。

なんだかんだと話しているうちに雨があがった。

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道路の右側はぞっとするくらいの断崖絶壁。
その下は川が流れていた。
上りが長かった分、下りも長い。

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ブールドワザンまで戻ってきた!

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スタート地点に戻ったということで、ほっとして座り込むが、
マルモッタはこれで終わりではない。
最後の最後に、もうひとつカテゴリー超級の峠に挑まなくてはならない。
その峠の名は、ラルプデュエズ。

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pic from wikipedia

21ものカーブを超えて、1100mの標高差を駆け上がる。
数々の伝説が生まれた峠だ。

下界の熱気に体が馴染むまで、うずくまったあと頭から水を被る。
意を決して、疲れ切った体を奮い立たせてバイクに跨る。

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ラルプデュエズへの挑戦がいよいよ始まった。
パンターニやランスが、大勢の観客に囲まれて
有り得ないスピードで上っていく光景が、目に浮かぶ。
彼らが走ったのと同じ峠にアタックする喜びに溢れる。

と同時に、そんな気持ちの高揚とは裏腹に、
自分の体にはもう余力がほとんどないことに気付く。

時刻はスタートしてから12時間が経過していた。
日本時間で深夜2時か3時頃を迎えようとしていた。
フランスへきてまだ3日目の我々にとっては
眠気を覚える時間帯だ。

疲労はピークに達しようとしていた。

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ガリビエのような、非日常的な光景と違って
目の前に広がる景色は、いつも走っている
六甲山のそれに近いように思われた。
道の向こうには4000m級の山々がちらちらと見えるけれど。

傾斜自体はそれほどきつくないと思われるが
もう体が動かない。。。
筋肉は少し休ませると回復するものだが、
もうその限度を超えてしまったようだ。

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途中で見かけたタンデムのカップルにもまた再会した。
お互いにここでは会話を交わす余裕がなかった。

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西日が追い打ちをかけるように我々を照りつける。
給水所ではたまらずストップする。

今日一日でかなり水分を摂取して胃腸が弱っているのか
もうそれほどの喉の渇きを覚えない。

我々はかなりスローペースできたせいか、
同じタイミングで上っている参加者は少なく、
見回せば、どちらかというと年配の方々が多いようだ。

若くてイキのいい連中は既に大半がゴールしているのだろう。
対向車線からは山頂から次々とロードバイクが降りてくる。
余裕があるのだろう。多くはニコニコして大きな声で
我々を励ましてくれるが、こちらはもうフラフラだ。。。

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こんな厳しい折り返しが何度も何度も続く。

 

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当日は2010年のツール・ド・フランス開幕日だった。
その前哨戦として行われたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで
このラルプデュエズは勝負の舞台になった。

ロードペインティングがまだ新しい。
ドーフィネの熱気がまだ残っているようだ。


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頭上高くにホースを張ったミストシャワーが設置されていた。
このあたりでガッチに似たローディとすれ違った。

ガッチは余裕でもうとっくにゴールしてるやろなあ。
待たせて悪いなあ。
パンターニは30分台でここを駆け上がったというけれど、
このペースじゃあ、2時間はかかりそうやわ。。。

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ガッチのためにも、早くゴールに辿り着きたいと思うけれど
体がもう動かない。

補給所がなくても、足を止めるほどになってしまった。
獲得高度は既に4000mを超えている。

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見るからに疲れたローディが
我々と同じタイミングで路肩に停まった。
対向車線を下ってきたどこかのチームカーから
大きな声がかかる。

車を路肩に停めるやいなや、若い兄さんが
勢い良く飛び出してきた。
疲労困憊の先輩ローディに対して
一生懸命励ましているようだ。

「ゴールはもうすぐですよ!がんばってくださいよ!」
「そこの筋肉が痛むんですか?ストレッチで伸ばしましょう。」

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21のコーナーにはそれぞれ、各年のこの峠の勝者の名が
プレートとして残されていた。

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ひとつの斜面で折り返しを重ねて、一気に上り詰めていく。
これを軽々と上っていくプロは本当にすごいと思う。

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ヒロチェも疲労のピークだが、ペースを保って
なんとか、なんとかゴールを目指す。

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たしかラルプデュエズはリゾート地。
宿泊施設がみえたということは、ゴールは近いのか?
でも、まだそれらしき雰囲気はない。

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残り数キロというところで、上から下ってきたガッチと遭遇!
話を聞くと、なんと最初のグランドンへの上りで
軽い熱中症のような症状になったらしい。

汗をかいたり尿を排泄したりする機能の働きが悪くなり、
体温調整ができず、補給も満足にとれず、非常に苦しかったようだ。
それでも、水をかぶったり、たびたび休憩をとったりして
だましだまし、なんとかゴールにたどり着いたらしい。

もう4,5時間は先にゴールしているんじゃないかと
思っていたが、思わぬ事態で、我々のほんの少し先を
行っていただけのようだ。

ガッチに励まされ、ラスト数キロへと全力を尽くす。
しんどいけれど、もう止まらないで行こうとヒロチェと話す。



ガッチのゴールシーン。
本当に疲れた様子。。

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そして、我々も無事にゴール!!
ゴール手前のホテル周辺のオーブンテラスあたりから
たくさんの祝福の拍手と歓声をもらった。
嬉しかった。

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やった!やったで!
これまでのジテンシャ人生で一番きつかった。。。

ゴール直後に写真を撮ったあと、まず最初にしたことは、、、

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二人そろってぶっ倒れた。。。。
本当に立っていられなかった。

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その後、食事とビールが振る舞われたのだが
ヒロチェは極度の疲労のため一切口をつけられず。。。

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21時をまわり、陽が傾くと、2000m近くの高地は
さすがに気温が低くなってきた。
参加者の多くが撤収したようだ。

この後、麓のブールドワザンまで
薄暗いラルプデュエズをダウンヒルすることに。
あれだけ辛かった上りも、下ればあっという間。
そんなもんだねえ。

それぞれが自分史上最高に疲れ切った体で
このあと、さらにグルノーブルまで車で帰ると
道路が群集によって占領されている異様な光景に出くわした。
よく見ると、彼らはスペインの国旗を振り回していた。
そう。サッカーワールドカップでスペインが準決勝で
勝利した夜だった。

ホテル到着後、一日ほとんど何も食べられなかったという
ガッチが軽い夕食をとりにでかけたが
私とヒロチェは倒れこむように眠りについた。

我々WEMOの大きな挑戦は終わった。
難易度最高ランクのグランフォンド、la Marmottaを全員が完走した!

<記録>

走行時間:13h 52min(実走12h 4min 5s)

走行距離:169.5km

獲得標高:4920m
消費カロリー:約8500kcal
順位:5107位/約8000人

そして旅は続く・・・

コメント

  1. すごい。すごすぎるルート。言葉を失うとはこのことですね。
    食べ物を前に手をつけられないヒロチェの表情が苛酷さを物語ってますね。
    そして…やっぱり行きたいなあ,と思いました。

    • zuzie
    • 2010年 8月 02日

    >ペダルさん
    まさか、ここまですごいとは、思っていませんでしたw
    体力の限界、とはこういうことを言うんだな、
    って最後のラルプデュエズを上っていて思いました。
    でも、クライマーのペダルさんなら、もうちょっとは
    楽じゃないかと思いますよ。
    是非是非、チャレンジしてください。

    • aiRyu
    • 2010年 8月 03日

    マルモッタお疲れ様でしたー。
    かなり過酷だったみたいですねえ。
    アルプスの山々を走破するのは私の夢です。
    定年退職したら参加したいと思っていましたが、
    こりゃ、体力あるうちに参加しないと無理そう。。。

    • zuzie
    • 2010年 8月 04日

    >aiRyuさん
    そんな夢をお持ちなら、ぜひマルモッタに
    チャレンジしてください!
    多少無理してでも行っておいたほうがいいです。
    やっぱりえいや!っていかないと、
    なかなか実行できませんからね。
    私は5年前のエタップはヒロチェに、
    今回のマルモッタはガッチに
    背中を押してもらい、参加を決意しました。
    行ってよかったです。

    • がっち
    • 2010年 8月 05日

    大作執筆お疲れさまでした!
    写真が多いから臨場感バッチリの参戦記だね
    読んでると、バイク破損から始まった長くて過酷な1日を思い出しました。
    いやーほんとキツかった!
    でも終わってみると不思議とまた挑戦したくなるんだよなー
    またいつか行こう!

  2. >ガッチ殿
    ガッチとヒロチェとマルモッタに参戦できてよかった。
    そしてみんな完走できて本当によかった。
    そして素敵な旅だった。
    ありがとうね。
    さあ、次へ行こう!

  3. 大作サーンキュ!! 
    本当にありがとう。

  4. >つるさん
    ありがとうございます。
    何か感じるところはありましたか?
    つるさんも、いつか、きっと、あの地を走ってください。

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