life is like a bike


自転車業界においてブランド力、販売数ともに世界トップである
台湾企業GIANT(ジャイアント)とはいかなる企業であるか、その実像に迫る。
同時に自転車産業の現実を台湾の「明」と日本の「暗」を通して浮かび上がらせる。

これを読めば、自転車乗りなら誰もが知っているジャイアントの
企業イメージが変わるだろう。私は尊敬と畏怖の念を持つに至った。
そして次のような疑問が沸き起こった。

なぜSONYがAppleになれなかったが問われているように、なぜ日本の自転車メーカーは
ジャイアントになれなかったのか。なぜ世界一だった日本の自転
車産業が、販売に関する
数値すらまともに公表できない壊滅状態になったのか。駐輪場に溢れる中国製ママチャリ
を見て私達は学ばなければいけない。

自転車が好きな人は是非読んで欲しい1冊。



以下は書籍の内容を大きくまとめたもの。
(茂木健一郎さんの連続ツイート風に)

巨人1:台湾の自転車輸出額は2002年の5億米ドルから、2011年には16億米ドルと
3倍になった。1台あたりの単価は380米ドル(約3万円)。一方日本製は単価1万円割れ。
1999年の総売上高は118億台湾ドルだったが、2011年には474億台湾ドルになった。

巨人2:GIANTの正式名称は「巨大機械工業」
40年前、台湾の片田舎の町工場に過ぎなかったジャイアントは、自転車業界の本当の
巨人=ジャイアントになった。中・高級車の自転車業界において、ジャイアントは紛れも
なく世界トップの完成車メーカーとして君臨している。

巨人3:「いま、やらなければ一生できないことがある」
台湾で大ヒットした『練習曲』で、ギターを背負った聾唖の若者は、自転車で台湾一周を
目指す旅の途中でこう言った。ジャイアントのトップ、73歳の劉金標はこの言葉に
動かされ、自らも台湾一周を目指した。自らの作ったジャイアントブランドの自転車に
乗って。台湾一周はおよそ1000km。

巨人4:劉金標は若くしていろいろな事業に手をだしたが、どれも2~3年でやめてしまった。
激動の歴史を歩んできた台湾人は、一度や二度の挫折では諦めない。親族たちとの
食事の席で、誰かが言った。「これからは自転車がいいんじゃないか」
劉金標たちは即座に「やろう」と決断した。親戚や知人から10人ほどの出資者を募り、
同じ年には台中に工場を立ち上げた。広さは1700坪程。従業員は38人のスタートだった。

巨人5:最初に工場で生産した自転車は品質が悪くて売り物にならなかった。
当時、台湾では国家の統一規格もなく、多くの工場でパーツを作っていたが規格や寸法
がバラバラで、世界のマーケットに売れるようなレベルではなかった。台湾自転車の評判
は本当に悪く、アメリカの店頭では『台湾製はお断り』という張り紙が出されていたほど
だった。日本のサイクルショーでは日本のメーカー担当者に握手を断られる屈辱を
味わった。会社はギリギリのところまで瀕していた。

巨人6:当時世界最大級の自転車メーカーの一つだったシュウィンにも当初は相手に
されなかったが、劉は何度もアプローチをかけてジャイアントの品質向上の努力を説明
した。やがて安くて品質のよい自転車を大量生産したいというシュウィンの思惑と一致して
OEM契約をとりつけた。こうしてジャイアントの生産量は急激に成長し、生産の7割を相互
に依存しあう関係になった。

巨人7:ところが、シュウィンは水面下で中国でのOEM生産の準備を進めていた。劉は
このピンチに対して、ジャイアントを自社ブランドによって生き残れるように改革するしか
ない、と考えた。そして5年のうちに世界的な世界網を作り上げた。OEMメーカーには
徹せず、自社ブランド商品との比率を5分5分にする目標をたてた。

巨人8:ブランド力強化の総仕上げとしてジャイアントが売った手がツール・ド・フランスへの
参戦だった。ホリゾンタルフレームが圧倒的に主流のなかにもちこんだスローピング
フレームには当時嘲笑に近い反応があった。しかしジャイアントは結果によって、技術の
正しさを証明した。

巨人9:日本はかつて世界一の自転車生産国であり、輸出国であった。
半導体のエルピーダが倒産し、電機メーカーの巨額の赤字決算が象徴するような
日本製造業の衰退は自転車産業において、最も早い段階で、しかも劇的に進行していた。
中国進出もせず、高付加価値化へのシフトもせず、現状維持のママチャリ市場に甘んじて
いるうちに、中国製自転車の波に飲み込まれた。日本の関係者からは「安い中国製には
太刀打ちできない」という嘆きしか聞こえない。

巨人10:台湾は基本的にオートバイを含めた車優先の社会であるにもかかわらず、
多くの人が週末になると自転車を楽しんでいる。ジャイアントは台湾をサイクルアイランド
にするための取組みをしている。韓国では自転車好きの李明博大統領の政策によって、
自転車ブームが起きている。中国も自転車の導入に積極的だ。日本には長い自転車乗用
の歴史と産業の基盤がありながら、自転車のスポーツ化に向けた政府のサポートは無に
等しく、業界の力も弱い。ジャイアントはそんな日本で次々に専門店をオープンしている。
自転車を売るだけではなく文化やライフスタイルを売る、という企業活動によってこの日本
を変えようとしている。

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