life is like a bike

Panacheとは他者を驚かせ、奮い立たせるような、際立って優れたパフォーマンスのこと。
それは単に勝利するだけで得られる称号ではなく、多くの場合苦境や逆境を跳ね除けて
得られるものである。RaphaのCEO、Simon Mottramが好んで使うキーワードだ。

そのSimonがRapha Cycle Club Osakaにやってくるとの報を聞いて、
私は大阪へと足を運んだ。



Panache Partyと銘打たれたこのイベントで、Simonは自身がRaphaというブランドを
立ち上げるきっかけとなったエロス・ポーリのPanacheのストーリーをはじめ、
今年のPanacheトップ3を披露してくれた。
※1994年のツール第15ステージで巨漢のルーラーが、超級山岳モン・ヴァントゥで全身全霊を込めたアタックをかけ逃げ切った。

最後に質疑応答の時間が設けられたので、私は拙い英語を駆使して思い切って
問いかけてみた。


Zuzie:「私はRaphaが日本に入ってきた早い時期からのユーザーで、当初は
このスタイリッシュで他に誰も着ていないRaphaのウェアを着ることが誇らしかった。
しかし、Raphaが商業的な成功を収めた結果、数多くの人がRaphaを着ることになった。
私を含め、中にはそれを少々残念に思っている人もいる。
商業的な成功(commercial success)と独自性(distinctiveness)のバランスについて
どう考えますか?」

Simon:それは大変よい質問だ。それはRaphaを続けていく上での課題でもある。
Appleを考えて見て欲しい。彼らのビジネススタイルは時代とともに
変わりつつも、そこには変わらない強いコンセプトがある。
Raphaはウェアの販売からスタートして、現在はRAPHA RANDONNÉES
という旅行のプロデュースをするまでに至った。自転車の素晴らしさを
より多くの人に伝えたいという思いは常に変わらない。
サイクルロードレースファンの数はまだサッカーファンの数に負けている。



Raphaのウェアを着ている人を多く見かけるということは、
それだけRaphaの考えに共感してくれた人が増えたということ。
Raphaは都市圏を中心にマーケティングしてきたので、そこにいると
ユーザーが増えたように感じるが、地方ではまだまだだ。
Rapha Cycle Club直営店は、実は地方にユーザーを広げるための
ハブのような役割を果たしている。

とにかくマーケットでシェアを高めるためだけに新製品を作り続ける
メーカーもあるが、Raphaはそうではない。Raphaはこれからも自転車の素晴らしさを
伝えるために、様々な取り組みをしていく一方、ご指摘のようなcommercial successと
distinctivenessの関係については常に考えていく。
(Rapha Japan 矢野大介氏のTranslationを含めた内容)



なるほど。
私はPerformaの時代からのAppleのファンなのだが、iPodやiPhoneが爆発的に
普及したからといって残念な気持ちになったりはしなかった。そう考えればいいのか。
Simonは最初に話してくれたような、Panacheを与えてくれるサイクルロードレースを
心から愛しており、その素晴らしさをより多くの人に伝えたいという強い気持ちに
ブレがない。Simonと同じ気持ちがあれば、目に見えるものの裏側にあるものを
感じて、惑うことはないだろう。

パーティーの後に何人かの人から私の質問に対する共感を伝えられた。
皆さん、CEO直々の言葉を聞いて納得できたのではないだろうか。

photo by Pedalさん

この日は参加者が選ぶ「あなたのPanache」の中からSimonがトップ3を選ぶ
というイベントもあって、なんと私がRapha Gentlemen’s Raceでひどい落車を
しながらも最後まで走りきったという体験を綴ったものが1位に選ばれ、
SimonからRapha Wineが手渡されるという幸運を得た。

私の場合はエロス・ポーリのように最後に勝利したわけでもなく、
ただ痛みに耐えて最後まで走りきったという個人的な体験だったので
なんとなく気恥ずかしくてスピーチがぐだぐだになってしまった。。

photo with Simon Mottram(頭ちっちゃ!)

Raphaと出会ってはや5年強。まさかブランドをたちあげたご本人と
お話できる日がくるとは思っていなかった。Simonは気さくで、
思慮深い話し方をする人で、穏やかな外見の内側に強い意志を感じさせる人だった。
お会いできて大変光栄だった。

私はこのブランドに出会っていなかったら、再び自転車の世界に戻ってこなかった
かもしれないし、これだけ多くの仲間たちと出会うこともなかっただろう。
私の世界を広げてくれたRaphaに感謝。

Thank you, Simon!

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